最近よく使われる「ZEH水準」について説明します。

    そもそも「ZEH」の定義とは

    国は2050年のカーボンニュートラルに向けて、建築物や住宅の省エネ性能の基準の見直しや義務化などの制度を設け、補助金等の支援によりより高い省エネ性能の住宅の普及に力を入れています。そこで対象になってるのが「ZEH」(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)です。この「ZEH」についての情報は経済産業省資源エネルギー庁のホームページで公開されています。
    ※ここでは戸建て住宅のZEHについて説明しています。

    ZEHの定義

    定性的な定義:ZEH とは、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギー等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」とする。

    『ZEH』:外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギー等により年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの住宅

    定量的な定義:『ZEH』:以下の①~④のすべてに適合した住宅
    ① ZEH 強化外皮基準(地域区分1~8地域の平成 28 年省エネルギー基準(ηAC値、気密・防露性能の確保等の留意事項)を満たした上で、UA値[W/㎡ K](1・2地域:0.40 以下、3地域:0.50 以下、4~7地域:0.60 以下)
    ② 再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から 20%以上の一次エネルギー消費量削減
    ③ 再生可能エネルギーを導入(容量不問)
    ④ 再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量削減

    ※戸建てのZEHには『ZEH』、Nearly ZEH、ZEH Orientedがあります。下のZEH定義一覧表参照

    ※「ZEH定義一覧表」はZEHロードマップフォローアップ委員会が2022年3/30発表の「更なるZEHの普及促進に向けたZEH委員会の今後について」より抜粋したものです。

    「ZEH水準」とは

    住宅ローン減税制度における「ZEH水準省エネ住宅」や子育てエコホームの要件となっている「ZEH水準住宅」等、「ZEH水準」と表記されているケースが目立ちます。令和5年度まで国交省の補助事業であった「地域型住宅グリーン化事業」においても「ZEH水準」という文言が用いられました。「ZEH水準」とはどのような水準なのでしょうか?

    以下の①、②の2項目のことを「ZEH水準」としています。
    ①「強化外皮基準」…住宅性能表示制度の断熱等性能等級5の基準
    ②「一次エネルギー消費量が省エネ基準から20%以上削減」 …住宅性能表示制度の一次エネルギー消費量等級6の基準 

    実質、『ZEH』の定義の①、②と同様の内容です。『ZEH』との違いは「再生可能エネルギー(太陽光発電等)」は必要ではないという事です。またこの基準は長期優良住宅の省エネ基準にもなっています。

    「ZEH水準」の証明

    ZEH水準の証明はBELSを取得することで可能になります。また長期優良住宅の認定を取得している住宅も「ZEH水準」の住宅と言えます。BELSは2024年4月の省エネ性能表示制度のスタートに伴い、その表示内容などが見直されました。

    BELSの「省エネ性能ラベル」(右図)にて「ZEH水準」の欄に✓マークが付きます。子育てエコホーム支援事業などではこのBELSを用いて交付申請が可能です。また住宅ローン減税を活用する場合に必要となる

    ZEH水準は2030年までに義務化されます

    2025年4月より原則すべての住宅・非住宅に省エネ基準適合(下の①及び②)が義務付けされますが、その基準はZEH水準よりワンランク下の基準です。ZEH水準と比較しやすいように以下の2点にまとめます。

    ①断熱等性能等級4
    ②一次エネルギー消費量等級4

    国はこの後2030年までに義務化の基準を「ZEH水準」に引き上げると発表しています。